日々の記録

数理工学徒の日記。どうでもいい話が多い。

処方された睡眠剤を飲んだ体験談(金縛り、明晰夢など)

昨日人生で初めて睡眠剤を飲んだら、かなり面白い体験ができたので記録を残しておくことにする。

 

夏休みあたりから諸々の事情で生活習慣が崩壊(4:00就寝12:00起床)しており、深刻な問題(食欲、意欲、集中力の低下、先延ばし癖等)が生じていたため保健センターを利用することにした。

(生活習慣が崩壊した理由は書き始めると長くなるうえ、今回書きたいこととは直接関係ないので省略する。完全に自己責任であって、特に周りの環境は関係ない。まあ3S、あるいはせめて3Aくらいから対面授業だったらこんな風にならなかった気もするが、それは置いといて。)

 

このままではいけないと思い、保健センターの精神科に予約を入れた。「保健センターの精神科は混んでるので予約がかなり先になってしまう」という噂通り、予約できたのは2週間ほど先だった。

待ちに待った二週間後、センターに向かい先生に経緯を説明したところ、睡眠剤を処方してもらった。毎晩寝る前に飲むように、とのことだった。

 

そしてこの薬を飲んだ結果、これまで経験がないような面白いものを見れた。一言でまとめるなら、強烈な明晰夢だ。所詮は人の夢の話なので、大してヤマもオチもないカオスな内容かもしれないが、個人的には今年一番印象的な体験だった気がする。

以下時系列に沿って状況を説明する。

 

0:40 薬を飲む。

サークルの仕事で文章を書いていたが、2,30分すると段々頭がぼーっとしてきて文章が書けなくなってきたためベッドに移動した。

1:10 就寝

最初は頭がぼーっとする程度だったが、あるとき急にグーンと下に引っ張られていくような感覚があった。いよいよ来たな、と感じた。息を吐くたびに徐々に体の自由が利かなくなり(麻酔が効いているような痺れ感があった)、視力も奪われていく。ただ、普通の「眠くなる」という感覚とは大きく異なっていた。

通常であれば、意識が朦朧としていくと同時に体が動きづらくなっていくものだが、今回は意識にあまり変化がなかった。そのため、体は動かないながら自分の状況をある程度冷静に分析することができていたのだ。

3回ほど深呼吸するうちに、私はほぼすべての感覚を失った。しかし意識だけは残っているので、体は麻痺していながらも頭では「自分は保健センターで処方された睡眠剤を飲んだ結果、強制的に眠りに落ちている」ということを理解していた。植物状態ってこんな感じなんだろうか、と思った。

その時、腕や胸につよい圧迫感を覚えた。巨大な生物に踏みつけられているようだった。(ここからは徐々に夢の世界に入っている。) 怖い上に苦しいので目覚めようと思ったが体が動かず覚醒できなかった。その後しばらくすると、詳細は忘れてしまったが、夢の世界での実体(自由に動かせる肉体?)を獲得し、気が付けば外を歩いていた。

見えていたのは小学校で体育の授業を受けている子供たちだ。知らない学校で赤や青の帽子をかぶった男子(女子はいなかったと思われる)たちが運動をしていた。徐々に夢の世界に好奇心が湧いてきて、「ひょっとすると自由に行きたいところへ行けるのでは」と思い、地元の高校に行ってみることにした。見事成功し、グラウンドを見下ろせる道にたどり着いた。行けたはいいものの、脳内再現の母校の風景は、クオリティが少し低めで偽物感があった。次はサークルの知り合いに会いに行ってみた。ちょうど前日に会っているし、それなりの頻度で会っているのだからわざわざ会いに行く必要などないのだが。

これらの光景を見ながら、自分は「現実世界に戻ったらこの様子をブログに書こう」などと余計なことを考えていた。

こんなことをしていると、今度は不自然なバイブ音が聞こえた。「現実世界でスマホの通知をオフにするの忘れてて、知り合いからLINEでも来たんだろうな」とすぐに分かった。(実際に起きた後スマホを確認すると1:23にLINEが来ていた。) 

現実世界からの干渉があったが、夢は中断されることなく続いた(続けた?)。この時になっても、現実世界と夢の世界はきちんと区別できていた。

 

つづいて、この世界から自発的に脱出できるのか試してみようと思った。自分がやってきたであろう扉(?)を何故か見つけたので、そこに行ってみた。二重三重の自動ガラス扉(スーパーとかにありがちなドア)だったが、何枚目かで跳ね返されて通過できなかった。ここからは出られないのか、と思ってとりあえずあきらめることにした。(今思うと我ながら「ベタな演出」で少し恥ずかしい。)

しばらくすると、ある瞬間急に視覚を取り戻した。そこには見慣れた火災報知器と照明の着いた天井があった。徐々に四肢の自由も取り戻した。そしてふと冷静な気分になり、何とも言えない恐怖で体が震えた。「もし本当に「そっちの世界」から戻ってこられなくなったら」「もしこれを間違えて2錠以上飲んでしまっていたら」などと考えてしまい、ベッドの上でうずくまっていた。

どのくらい時間が経ったのだろうか、とふと気になった。(夢の中の「体感」ではせいぜい15分程度だった)。というのも、たいていこういうお話(SF小説、映画等)では、現実世界と夢の世界で時間の経つスピードが大きく違っているイメージがあるからだ。おそるおそる時計を確認しに行くと、1:32であった。これには驚いた。夢の中での自分の「体感」時間は、現実世界での時間とそれほど違わなかった。

少し気分が落ち着いたので、今見たものを記録しようと思いベッドから出てペンとノートをとってきた。まぶしいので電気は付けずに、経験した内容を空白のページに書きなぐった。しばらくすると、寝落ちしていたようだ。(今度は通常の入眠と同様に、気が付けば意識を失っていた。)

 

 

 

以上が昨晩経験した内容だ。非常に短時間ではあるもののいわゆる「明晰夢」の強烈なバージョンを体験できた。寝落ち(?)する前から、ハッと目が覚めるまで、ずっと連続した意識があり、現実世界と夢との区別がついており、自分がどちらにいるのかもはっきりわかっていた。現実世界からの干渉も正しく認識できていた。

もちろん、上で述べたことが、自分が「見た」ものの正確な記録(記憶?)になっている自信など全くない。目が覚めてから、もろもろの整合性が保たれるように無意識に内容を補っている可能性はかなり高い。(検証など不可能だが。)

しかし、自分が生み出した虚構を、虚構と分かったうえで歩き回った(と感じられた)のは非常に面白かった。体の感覚が急速に麻痺していくだけでも奇妙なのに、それに加えて夢の中でも意識を保ち続けられたのはとても不気味でもあり同時にエキサイティングでもあった。

 

今回の反省点を挙げるとするなら、空を飛んでみようとしなかったことだ 。まだ六日分薬があるので、もし今後も同じようなことが起きるのであればぜひチャレンジしていきたい。

 

それでは今晩も処方箋通り薬を服用していこうと思う。おやすみなさい。